第8章 遭遇
「いや、だから姫さまって誰……え、まさか、ダガーちゃん?」
お兄ちゃんは丸くした目をこちらに向けて、それからぽかんと口を開けた。
「ゴホン、今まで隠していたが、実はこのお方こそがアレクサンドリア王女、ガーネット姫さまなのである!」
「それ本当かよ……」
それが冗談でないことを感じ取ったのか、お兄ちゃんは虚ろに瞳を揺らした。
よほどのショックを受けたらしい。
この様子ではしばらく立ち直れなさそうである。
ダガーはお兄ちゃんへ申し訳なく思いつつ、マーカスへ体を向ける。
「あなた、たしかマーカスよね? こんなところで何をしてるの?」
「何をしてるって、それはこっちのセリフっス。俺たちは魔の森を抜け出した後……」
「姫さま! このようなゴロツキと話してはなりませんぞ!」
「それにしても元気そうでよかっ……」
「姫さま! なりませぬ!」
構わず話し続けようとしても、スタイナーに遮られてしまって全く話が進まない。
「姫さまこのような……」
「スタイナー!! いいかげんにしなさい!!」
「な、なんと……」
「わたしは再会した知人と話もさせてもらえないのかしら!?」
「知人などとそのような……」
「アデルバート=スタイナー!!」
「ハッ!!」
スタイナーはびしり敬礼をしつつ、その表情はどこか愕然としているようだった。
「怒られてるずら」
「騎士の名が泣くっス」