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王女様に祝福を【FFIX】

第8章 遭遇




周りの喧騒が膜ごしであるかのように遠くで流れている。

この感覚はダガーのものだろうか。

お兄ちゃんの黒い瞳に吸い込まれるような錯覚を起こすほど、二人はしばらく見詰めあっていた。

 
「リンドブルム方面行き~。ただいま出発いたしましたぁ~!」
 
 
駅員のアナウンスで一時の沈黙は崩れる。

ダガーははっとしたように瞳を揺らすと、視線をお兄ちゃんから遠ざけた。

お兄ちゃんが弁解するように慌てた声を出す。

 
「別に今すぐ返事が欲しいってわけじゃないんだ。俺達出会ってすぐだし、お互いのことも知らないだろうし。ただ俺の気持ちを知ってほしかったんだ……冗談じゃなくて本気だからさ」
 
 
お兄ちゃんは耳の後ろあたりに手を当てながら、それでも視線をそらすことなくこちらを見詰めた。

そんな時だった、休憩所内に聞き覚えのあるとぼけた声が響いたのは。

 
「乗り遅れたずら~~!!」
 
「シナさんが景色ながめながら南ゲート名物“まんまるカステラ”食べたいなんて言うからっス」
 
 
振り返ると、相変わらずの強面でずんぐりむっくりな体型の男と、目深くバンダナを巻いた耳の尖った男がこちらに近づいてきていた。

魔の森で別れたタンタラスの団員。

たしか名前はシナとマーカス。
 

「あ……」

「あ……」
 
 
目が合うと、彼らは気軽にこちらに近づいてくる。
 

「お姫さまじゃないっスか!? こんなところで何してるっスか!?」
 
「……お姫さま?」
 
 
お兄ちゃんが首を傾げる。

後ろからガシャガシャと鎧の鳴る音が近づいた。

 
「おのれ悪党!! しょうこりもなく、まだ姫さまに付きまとうか!」
 
「誰ずら? このブリキのおもちゃみたいなのは」
 
「ええい、忘れたとは言わせぬぞ!」
 
「忘れたっスか? プルート隊の隊長っス」
 
「ああ、思い出したずら! あの芝居の下手な騎士ずら!」
 
「グググ……口のきき方すら知らぬとは……」
 
「ちょっと待ってくれよ。スタイナーさん、この人達は誰なんすか? 悪党って……」
 
 
完璧に置いてけぼりをくらっているお兄ちゃんに、スタイナーは鼻息荒く言い放つ。

 
「こやつらは姫さまを誘拐しようとした、盗っ人どもである!!」


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