第8章 遭遇
ダガーがまんまるカステラを食べ終わったのを見計らったように、いや、見計らったんだろう、お兄ちゃんがうかがうような声を出した。
「ダガーちゃんは、誰か好きな人とかいる?」
お兄ちゃん、直球!!
「わたしはいないけど……タイチはいるの?」
「俺は……いる」
お兄ちゃんは照れ隠すように視線を下げた。
それからちらりとこちらを見やる。
これは、すごい攻めに出たんじゃないの?
そう思いはしたものの、ダガーの心境が読めてしまう私は大きく肩を落とす。
『レイナ、どうしよう。タイチに好きな人がいるなんて想定外だったわ! 彼でレイナの恋心を確かめる作戦だったけど、これは中止かしら?』
ああ、お兄ちゃん、あなたの恋心はダガーには全然伝わってないみたいです!
これは、私のお兄ちゃんだってことを伝えるべきかな?
どっちにしろダガーの言う作戦が中止だと言うなら、今バラしても変わらないだろうしね。
そう思って決意を固めた私だったけれど、「あのさ!」という危機迫ったお兄ちゃんの声に阻まれた。
お兄ちゃんは眠そうな瞳をあちこちに揺らして、それからその瞳をこちらにまっすぐに向ける。
「俺、ダガーちゃんの事が好きだ。一目惚れなんだ」
瞬間、どくんと大きく心臓がはねた。
遠くでエンジン音が響く。