第8章 遭遇
今後の予定を確認するとかでスタイナーとは大きな地図の前で別れた。
私達はさっきから気になっていた甘い香りに素直に誘われて、フードコートの一角にやってくる。
「南ゲートのまんまるカステラ! 輪っかに切れば太陽の笑顔。ふたつに切れば虹のかけ橋! 世界のかけ橋、南ゲートの味のかけ橋、まんまるカステラ!!」
「これが南ゲートの名物、“まんまるカステラ”ね。美味しそうだわ」
「やあ、いらっしゃい。何のごよう?」
「まんまるカステラを二ついただけるかしら?」
当たり前に二つ注文したダガーだったけれど、お兄ちゃんが気まずげにそれを遮った。
「俺は金持ってないからいいよ。ダガーちゃんだけ食べて」
「そんな遠慮することないのに」
「いや、これ以上払ってもらうのは、さすがにその……」
そう言うお兄ちゃんはとてつもなくバツが悪そうな顔をしていた。
惚れた女の子のヒモになるってツラいだろうなぁ。
強制的に無一文になった事情を知っているだけに、かわいそうに思えてくる。