第8章 遭遇
「タイチ殿、その指の豆はなんであるか? 一朝一夕にできたものではないようだが……」
「ああ、俺少し前までずっとピッチャーをやってたんです」
「ピッチャー?」
「え~と、あれだ、手のひらサイズのボールを投げる競技みたいなもの。だから投球には自信あるぜ」
「だったら投擲武器はどうかしら? 円月輪とか、ナイフやダガーでもいいわね。武器を投げて攻撃するのよ」
「それいいな。剣なんかよりよっぽど俺にむいてる気がする」
「じゃあ、それで決まりね!」
ダガーは一つ頷くと店主に声をかけ、次々と注文の品を口にした。
ほどなくして、店主が奥から装備を取り出し終える。
「ナイフ十本、ダガー十本、円月輪十個、それにレザープレート、ホルスター、グローブ。合わせて11,350ギルね」
店主の告げた金額にお兄ちゃんは顔を青くさせた。
彼は持ち金がないためダガーに立て替えてもらうことにはなっていたのだけど、改めて聞くとその金額の高さにおののいたのだろう。
私のこれまでの経験だと1ギルが10円くらいだから、日本円換算するとその金額は10万円以上になる。
「ごめん、絶対返すから!」
「わたしは別に返してもらわなくてもいいんだけど」
「いや、けっこうな金額だったろ。出世払いでもなんでも絶対に返すよ」
「そう? だったらタイチには戦闘で頑張ってもらわないとね!」
「いや、うーん……まぁ、頑張らないとな」
青い表情のままのタイチを見て、ダガーはくすりと笑った。