第8章 遭遇
「けっこう賑わってるのね」
鉄馬車を降り、入った休憩所内は高速道路のサービスエリアのような場所だった。
フードコートの並びにある売店へダガー、スタイナー、お兄ちゃんは足を向ける。
「マリーは?」
「外が落ち着くからって休憩所にはついてこなかったみたいだな」
「男の人が多いものね」
フードコートの座席にはいかにもな作業着を着た男の姿も多い。
鉄馬車の整備に来た人も多そうだ。
……
ああ、どうしよう……。
結局ダガーにお兄ちゃんのことは話せてない。
タイチが私のお兄ちゃんであることも、お兄ちゃんがダガーに一目惚れしただろうことも。
話すべき?
タイチが私のお兄ちゃんであることは話すべきかもしれない。
でもそのことを言ったとして、ダガーはどうするんだろう。
今はお兄ちゃんと一緒にいることで私の恋心を確認するっていう謎の理由で同行することになっているけど、その理由がなくなったらお兄ちゃんとは別れることになるのかな。
それは……困る、よね。
だって、私まだお兄ちゃんに謝ってないし。
今別れたらそれこそこの広い世界の中だ、また会える保障はない。
生きて会えるかもわからない。
そもそもお兄ちゃんはなんでこっちに来ちゃったんだろう。
私を追って?
…………
そうかもしれない。
だってお兄ちゃん、喧嘩した後はいっつも私を迎えにきてくれる。
うん、やっぱり、お兄ちゃんに自分のことを話すのは、身体のこととかちゃんと自分のことにけりがついてからだ。
じゃあ、ダガーには……?
そんな事を悶々と考えていると、ダガーが話題を切り出した。
「それで、タイチにはどんな武器がいいかしら? 魔法は使えないのよね」
「魔法はたぶん使えないと思う。それと剣も全く触ったことがない」
お兄ちゃんは申し訳なさそうに眉を寄せる。
「ある程度の鍛錬がなければ剣を武器として使うのは厳しいであろう。護身用にナイフやダガーを持っておくのが無難なのではないか?」
「そうねぇ……」
頭を悩ませるダガーの横で、スタイナーがふと気がついたように声を上げた。