第8章 遭遇
『前にたしか、ジタンのことは見た目が好みなだけなのかもしれないって言ってたわよね?』
ダガーの言葉に私は変な声を上げそうになった。
『えっ、いや、こんなときにどうしたの突然』
『わたし考えたんだけど、彼と一緒にいればそれがわかるんじゃないかと思うの』
私はなんだか嫌な予感がして、唾を飲みこんだ。
『彼ってお兄……タイチ、さんのことだよね? それって言うのは……』
『ええ、タイチもなかなか男前な方だと思うの。だから、タイチと一緒に行動して、ドキドキしなかったらそれはジタンだったからってわかるでしょ?』
『ちょっと待ってよ! ダガー、それは……』
「なあ、どうかな?」
お兄ちゃんが伺うように、こちらを見る。
「そうね、実はわたし達も目指しているのはアレクサンドリアなの。これも何かの縁かもしれないわ。ぜひ、一緒に行きましょう!」
『ちょっと、ダガー!』
「本当か、サンキューな!」
いや、ちょっと待って!!
今の話だと、私がお兄ちゃんにときめくかどうか、一緒に行動して試してみようってことだよね。
私がお兄ちゃんにときめくはずがないでしょう!
だいたい、男前度合いだってお兄ちゃんがジタンに勝てるわけがないし。
いや、それになにより、私は気づいてしまったのだ。
この男がさっきから落ち着きがない理由に。
気づきたくなかったけど、気づいちゃったんだからしょうがない。
おかしいと思ってたんだ、あのお兄ちゃんがこんなに落ち着きがないなんて。
一緒に行かせてくれと頼みながら、その実私と、つまりはダガーと視線が絡むと視線をうろちょろさせる。
この男、ダガーに惚れてる!!
よく見れば頬も少し赤らんでいるし。
ぎゃ~!!
その顔でこっち見ないで!!
ああ、この現実をダガーに伝えるべきか否か。
そんなことに頭を悩ませている間に、山頂の駅に着いたらお兄ちゃん用の武器を選ぼう、ということで話は進んでいた。