第8章 遭遇
ビビside.
「クレイラに逃げ込まれたら、もう、どうにもならんわ!! ええい、クジャよ。また、おまえの力でなんとかならんのか!?」
ブラネ女王にクジャと呼ばれた人物は、腰に届くほどの銀髪を優雅になびかせて、両腕を大きく広げる。
「お任せくださいませ。陛下にご満足頂けるショーをこのクジャめがお届けいたします」
トントンと肩をたたかれた。
ボクはびっくりして後ろを振り返ると、すっかり見慣れたコック姿の人が肩を落としていた。
「アイヤ~、ここなんにもないアルよ」
ボクはほっと胸をなでおろす。
この人はギザマルークの洞窟に行く途中で一緒に行動することになったクイナだ。
食の道をきわめるために世界を回ることを決めたらしい。
ボクはし~っと口元に人差し指をもってくる。
そんな大声で喋って、ブラネ女王達に気づかれたら大変だから。
「誰だ!!」
広場からの大声にボク達は二人して肩を大きく跳ねさせる。
どうしよう、見つかった……?
恐る恐る広場に視線を戻すと、どうやら今の大声がボク達に向けたものではないことがわかった。
いつの間にか広場に一人のブルメシア兵がやって来ていて、ブラネ女王に向かって剣を向けている。
「おまえたちっ!! これ以上、ブルメシアを荒らさせはしないぞ!!」
「フッ、私をベアトリクスと知って挑むのですか?」
「ベ、ベアトリクス!」
ブルメシアの兵士さんは構えていた剣をわななかせた。
ベアトリクスという名前はボクでも聞いたことがある。
アレクサンドリアの怖い女将軍だとか……ブラネ女王の傍に控えていた、あの綺麗な人がそうだったんだ。
ボクはぎゅっと手に力をいれる。
「その勇気だけは認めましょう。ですが私は容赦いたしませんよ!」
ベアトリクス将軍が鞘から剣を引き抜いた時、広場に二つの影が落ちてくる。
ベアトリクス将軍は少し驚いた顔をすると、すぐに目を細めた。
「あっ、ジタンアル! ワタシ達も行くアルよ!!」
「う、うん!!」
走りだすクイナにつられるようにして、ボクも傍らに置いてあった杖を握って広場へ駆け出した。