第8章 遭遇
ビビside.
ボク達はギザマルークの洞窟を抜けて、ブルメシアへとやってきていた。
ブルメシアは次から次へと降ってくる雨を全て吸収したように、道から建物から全てが青い。
だけど今のそれらは残酷に壊されていて、そこらじゅうを充満する錆びた鉄のような臭いと道を流れる血の赤とに、全てをぐちゃぐちゃに塗り潰されている。
ブルメシアの王宮に近づくたび、フライヤのお姉ちゃんは苦しそうな顔をした。
ボク達がやった来た時にはたぶんブルメシアの征服はすでに終わっていて、ボクらは数体の黒魔道士兵と、あとは街に入りこんだモンスターを倒すだけだった。
自分と似た姿の彼らは、人を殺すことを何とも思わないような目をしていて、なんだかとても恐ろしい。
ボクは彼らと一緒、なのかな……恐い。
それでも、ボクは人を殺したりはしないし、傷つけたくはないし。
その気持ちは本物だと思うから……。
やっぱり、ボクは自分が何者であるかを知らなくちゃいけないんだ。
フライヤのお姉ちゃんにそう伝えると、お姉ちゃんは柔らかく目を細めた。
リンドブルムでいなくなったダガーお姉ちゃんには、今のところ会えていない。
ジタンは何も言わないけれど、ずっと気にしていると思う。
リンドブルムで言い争って、それっきりになっているから。
お姉ちゃんは今どこにいるんだろう。
ボクも早くお姉ちゃんに会いたい。
「砂……、まさか、ブルメシア王が逃げ込んだのは、クレイラではあるまいな?」
広場から緊迫した声が響いた。
ボクは目の前の広場に意識を戻す。
ザアザアと広場は雨ざらしになっていて、でもそんなことを気にもとめない三人が中央に佇んでいる。
そのうちの一人、こんなどしゃ降りの中だというのに扇子を動かしているブラネ女王が地団駄を踏んだ。
「クレイラだとしたら、やっかいなことになるぞ!」
ブラネ女王の隣に控える、片目を眼帯で隠した女の剣士さんも考え込むように俯いた。
「クレイラですか……あの砂嵐の中にさえ入れれば、私の軍隊で攻め上がれるのですが……」