• テキストサイズ

王女様に祝福を【FFIX】

第8章 遭遇




「ごめんなさい、ボーデン駅で揃えたばかりで……お店ってこの近くなの?」
 
「そうでしたか……ええっと、お店はアレクサンドリア側の駅にあります」
 
「じゃあ途中まで一緒ね。私達はトレノに向かってるから……それで、そちらの方は?」
 
 
ダガーが視線をやると、男は顔を強ばらせた。

何と言おうかと考えを巡らせているようだったけれど、結局男が何か言う前に女の子が先に口を開く。
 

「それが、びっくりなんですよ! この人、数日前にうちの店の裏に倒れてて、それからお店で面倒みてるんですけどね……それより立ち話もあれですから、座りませんか?」
 
 
女の子の提案に、私達はボックス席へ移動する。

私もだいぶ落ち着いてきていた。

さきほどの衝撃から頭がずっとぐるぐるしていたのだけれど、それもだいぶ収まってきた。

斜め前で腰掛けようと肘掛に手をつく男が視界に映る。

その指先には何度も破けては固まってを繰り返したであろう、年季の入った豆がいくつもくっついていた。


私はもう一度、深呼吸をする。

この男に見覚えがあった。

いや、見覚えがあるどころの話じゃない。
 

まだ地球にいた頃の一般的な朝の記憶。

ダイニングテーブルの定位置にはお父さんが座っていて、お母さんが台所から味噌汁を運んでくる。

そして寝癖がついた頭をボリボリ掻きながら、リビングに入ってくる眠そうなお兄ちゃんを、私が「お兄ちゃん、遅い!!」なんて注意するんだ。

そういえば、お兄ちゃんは寝起きじゃなくてもいつも眠たそうな目をしていた。
 

懐かしい。

……懐かしいな。
 

目の前にいるこの人は……私のお兄ちゃんだ。
 


/ 389ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp