第2章 家出騒動
目の前でサラリとした金髪が揺れる。
「おっと!」
ぶつかりそうになった人は、アレクサンドリアでは珍しい男兵だった。
ヘルメットをつけておらず、青い瞳や勝気そうに上げられた口角など、とても整った顔だと分かる。
多分スタイナーが率いてるプルート隊員だと思うんだけど……こんな人いたかな?
まあいいや。
そんなことより、先を急がないと。
そう思って待っているのに、階段の前からなかなかどいてくれない。
「あの……道、譲ってくれませんか?」
痺れをきらして私がそう声を掛けると、男はあろうことか「どれどれ」と私の顔を覗き込んできた。
ビクリと後ずさる。
なんなの、この人。
「あの、なにか……?」
私がそう尋ねれば、男はニヤリと笑う。
「いや、実はね……オレがずっと待っていたのは君のことじゃないかなあ、と思ってね」
男は大業にもそんなことをぬかした。