第8章 遭遇
車掌さんの言うとおり、車内はガラガラだった。
真ん中の通路を挟んで左右に二つずつ、計四つのボックス席しか乗車席はない。
手前右側のボックスに座る男が一人いるだけで、あとの席は空だ。
元々利用者がそんなにいるわけでもないのだろう。
今では飛空艇という便利な移動手段もある。
ダガーはスタスタと通路を進んで左奥のボックス席に腰かけると、ふぅと息をはいた。
『……ちょっと気が抜けたみたい』
『リンドブルムから長かったもんね。スタイナーと二人だったし』
『戦闘面が大変なのは確かだったわね……でも私達だけでもここまで来ることができたわ』
それからダガーは少し考えると、余計な言葉をつけ足した。
『しかたがないとはいえ、レイナには悪いことをしたかしら? ジタンと別れるようなことになってしまって……』
彼女のお節介な言葉に、私はため息をつく。
『あのねぇ、ダガー……前にも言ったけど、別に私はジタンのことが好きってわけじゃあ……』
『ええ、そうだったわね。ジタンが好きかどうかはわからないんだったわね』
ダガーの呆れたような声に私が反論しようとすると、それは汽笛の甲高い音に遮られた。
そろそろ出発するのか、エンジンの稼働音が響きはじめる。
「待って待って待って〜っ」
慌てた声とともに女の子が車内に駆け込んできた。
茶色の髪を二つに結ったその子は、肩を大きく上下させて息をととのえる。
「はぁ……間に合ってよかった〜っ」
十分に息をととのえ終わると視線を車内に巡らせ、その視線は何故かこちらで止まった。
「あ、さっきはありがとうございました!」
女の子がぺこりとお辞儀するのに、スタイナーが「いや、こちらこそである」と応じるので、私達が袋に入っていた間に何かあったのかもしれない。
そんなことを考えている間に、鉄馬車は動きだした。