第8章 遭遇
駅の売店で足りなくなったアイテムを補給すれば、いよいよ乗車。
車両の入口にはかっちりとした制服を身につけた男の人が立っているけど……この人が車掌さんなのかな?
「ベルクメアに乗車されるのかな?」
ダガーが頷いてみせると、車掌さんはゲートパスの提示を求めてきた。
ゲートパスはゲートやこの鉄馬車を利用するために必要なもので、鉄馬車を使えば国境を越えられることを考えればパスポートのようなものなのだろう。
ちなみにゲートパスはスタイナーが手に入れてくれた。
私達がいつの日にか壊してしまった南ゲートの復旧作業に人員を募集しているようで、スタイナーはこれに住み込みで参加するという条件でゲートパスを手に入れたのだ。
もちろんそれはここに入るための表向きの理由だけどね。
「……ほい、たしかに」
車掌さんは軽く確認しただけでゲートパスをダガーに返した。
今のダガーは変装をしているわけではないけれど、特に疑われた様子はない。
一国の王女であるのに顔を知られていないのかな、というのはダリ村でも抱いた疑問だったけれど、この世界では地球ほどメディアが発達しているわけでもないのでそういうものかと納得している。
車掌さんはかぶっていた帽子をいじると、ちらりと車内に視線をやる。
「お客が少ないので出発時間はゆうずうできるよ?」
どうするかい? という視線に、ダガーは「すぐ乗るわ」と答えた。
この駅に用事があるわけでもないし。
別にかまわないだろう、とスタイナーも頷く。
「では、乗っとくれ。もうじき出発するんでな」