第7章 交差する思い〜リンドブルム〜
私は再び目の前の料理に目をやる。
この料理には、睡眠薬が仕込まれていた。
ダガーの考えに反対はしないけれど、少々気が引けてしまうのは仕方ないことだろうね。
「この料理は手で食べるのがならわしブリ。カッコなど気にせずガツガツ食べてくれブリ」
「……では、お言葉に甘えて、冷めないうちにいただきましょう」
ダガーは睡眠薬の入っていない料理に手をのばした。
変化が現れたのは、皆が料理を食べはじめてしばらくしてからだった。
「あれ……ボク、おなかいっぱいみたい。なんだか眠くなってきちゃった……」
ビビが眠たそうに目をしょぼしょぼとさせる。
続けて、フライヤさんがガクリと膝をついた。
「し、しまった! 毒かっ!?」
スタイナーの慌てる声の中で、目を細め必死に眠気と闘いながらこちらを見つめるジタンがやけに鮮明に見えた。
「だ、ダガー……?」
やがて抗えない眠気に敗れ、床に伏す。
「不覚! じ、自分も……苦しくなってきたようであります……!」
バタバタと隣でスタイナーが手を振っている。
「も、もうしわけありません、姫さま……自分が毒味をしておれば、このようなことには……」
「そんなはずはないわ。スタイナーのには入ってないんだから」
「へっ……? そう言われてみれば、苦しくもなんともありませんな」
ダガーがアレクサンドリアに行くのに選んだお供はスタイナーだった。
彼の料理に睡眠薬は入れていない。
スタイナーだったら説得すれば頷いてくれると期待したのだ。
「お、お待ちくだされ! なぜそのようなことをご存知で!? ま、まさか姫さま!」