第7章 交差する思い〜リンドブルム〜
「おいしそうなごちそうがいっぱいあるね」
「これらの料理は五百年以上も前からこの地に伝わる伝統的な狩猟祭料理ブリ」
目の前に並ぶ美味しそうな料理を眺めて、私は複雑な心境にいた。
話は一時間ほど前に遡る。
『わたし……やっぱり、ここで待ってるだけなんて嫌なの』
ダガーの告白は唐突なようでいて、そうでもなかった。
なぜなら、彼女がリンドブルムに来てから、ずっと悩んでいたことは知っていたからだ。
ダガーが、王女として、ブラネの娘として、自分に何かできないか悩んでいたことを私は知っていた。
だから私に、彼女の決めたことを反対しようなんて考えは一切なかった。
『うん、それで、ダガーはどうすることに決めたの?』
『……レイナは反対しないのね?』
『うーん、そうだね。私はダガーに身体を借りてる身だし、それに……反対しても、ダガーはもう決めたんでしょ?』
ダガーは少し困ったように、『わたしはもう、この身体の半分はレイナのものだと思っているけどね』と笑った。
『いちおう、レイナにも確認を取っておきたかったの。わたしが決めてしまうと、レイナにも付き合ってもらうことになってしまうから』
『それこそ無駄な気遣いだよ。ダガーに付いていくって私はずいぶん前に決めてるよ?』
『……ありがとう』
『それで、どうすることに決めたの?』
実を言うと、ダガーの考えていることが分かる私には、下した決断がどんなものなのかはすでに分かっていた。
改めて訊ねたのは、ちゃんと彼女の言葉で聞いておいたほうがいいと思ったからだ。
『おそらく、今回ブルメシアを襲撃したのはお母さまだわ。だとしたら、今度の戦争は“霧の大陸”の三大国を巻き込む大戦争になる。確かに、わたしが戦場へ行ってもできることは少ないわ。だから、わたしは直接アレクサンドリアへ向かってお母さまを説得しようと思うの』
『うん、わかった。もちろん私も協力する。でもそれには色々問題があるよ。私達だけでアレクサンドリアまで行けると思えないし、それになにより、ここを出ることもできるかどうか……』
『それは、わたしに考えがあるわ──』