第2章 家出騒動
自室に戻った私は窮屈だったドレスを脱ぎさり、動きやすい服へと着替える。
その上から白いローブを羽織って顔を隠すためにフードを深く被れば、城仕えの魔導師にでも見えるはず。
鏡を見て最後のチェックをしていると、自分の顔が笑っていることに気がついた。
『大丈夫そうですね、今のうちに行きましょう』
ガーネットに促されて私は事前に準備していた旅の荷物を身につける。
それからそろりと扉を開けて、廊下に兵士がいないことを確認。
劇のおかげかこの辺りの警備は薄いらしく、ちょうど誰もいない。
サッと身体を滑らせてドアを閉める。
ドキドキとする胸を落ち着けて、ふうと息を吐いた。
どうしよう、ちょっと楽しいかも。
家出なんて大それたことをするのは初めてだし。
それにこの世界に来て、お城から出るのも初めてだ。
『わたくしも……』
「うん?」
『お城から出るのは初めてではないですけど、自由に出歩くのは初めて……だから、わたくしも実はちょっと楽しみだったの』
ガーネットの思わぬ告白。
数秒後、私達は二人でクスクスと笑った。
なんだか楽しくなってきてしまったのだ。
「成功させようね」
『ええ、もちろん』
ガーネットとそんな言葉を交わすと、さっそく足を進める。