第7章 交差する思い〜リンドブルム〜
ガーネットside.
おじさまとの話が終わると、わたしは再び客間へと戻ってきていた。
『シドさんが味方になってくれてよかったね』
わたしがぼんやりとベッドのふちに腰掛けていれば、レイナがそんなことを言った。
そうだ、彼女には感謝しなければならない。
自分の事情を知っている人がいるというのは、わたしにとってそれだけで大きな支えだったのだ。
わたしが感謝の言葉を心の中で呟けば、レイナは『そんな、私なんか……』と返したが、彼女はどこか嬉しそうに笑った。
今度はわたしが彼女のために何かする番かしら……?
それが礼儀であるし……それに、いつもなにかと明るい彼女のために何かできれば、とも思うのだ。
今まで城で育ってきたわたしは、心を許せるほどの友人ができたことはなかったけれど……もしかして、彼女のような存在が友達というものなのかしら?
そう考えると、心の奥がむず痒くなった。
なんとなく気恥しくしていると、劇場街で舞台が終わったらしく、くぐもるような鐘の音が響いた。
『そう言えば、ジタンは時計塔に住んでるって言ってたね。今頃そこで鐘の音を聞いてたりするのかな?』
やる事もないですし、行ってみましょうか。
思いつくとそれは名案に思えてきて、『あ、それいい!』とはしゃぐレイナの声にも後押しされてわたしは立ち上がる。
階段を下りると、入口付近でこの部屋を警護していた兵士が「何か御用でございますか?」と声をかけてきた。
それに軽く用件だけ伝えて客間を後にしようとしたのだけど、思いがけず兵士から待ったがかかった。
「恐れながら、ガーネット姫さま、大公殿下のご命令です。それはなりませぬ」
兵士はきっぱりと断りの文句を放って、入口を塞ぐように仁王立ちする。
「狩猟祭を間近に控え、城下町には各地から大勢の人々がつめかけております。この混乱に乗じて悪行を働く者も少なくありません。それに姫さまがこの国にいることを知らされているのはわずかな者達だけ。ガーネット姫さまの安全のためです。しばらくの間、行動をお控えください」
そう言われてしまうと、それもそうなのかとわたしは素直に引き下がった。
自分の身分には慣れている。