第7章 交差する思い〜リンドブルム〜
ガーネットside.
シドおじさまはブリ虫である自身の身体を器用に捻り、頭の上に疑問符を浮かび上がらせた。
「うむ? ブラネ女王のことはわかっておったが……他にも心配事があるブリか?」
「はい……でもその、信じてもらえるか……」
レイナのことはまだ誰にも話したことはない。
その理由の一つに、その証明ができないというのがあった。
少しだけれど、他人に話すのは躊躇われるという心情があったのだ。
しかし、わたしの心配は杞憂に終わる。
「これでもワシは一国を治めておるブリ。どんなことでも受け止めるブリよ」
おじさまの言葉にはどんと受け入れるような力強さがあった。
姿はブリ虫でも、さすが国の長といったところだろうか。
わたしの中に残っていた少しの不安は、全て取り払われた。
「わかりました……ではお話しします。実は……今のわたくしの身体には、二つの人格があるのです」
「……ブリ?」
ぱちくりと、そのブリ虫特有の大きな瞳は開け閉めされた。
呆気にとられたようなその顔は、ブリ虫らしいコミカルなものだ。
『ダガー、言い方! 今のだと、言い方がちょっと! ちゃんと私が空から降って来たところから説明しないと……いや、それはそれでアレなのかなぁ』
とにかく、わたくしの言い方が悪かったのでしょうか。
おじさまとオルベルタ様は、それは予想していなかった! といったような表情をしてこちらを見ていた。
おそらく、わたくしが悪かったのでしょうね。
コホンと軽く咳払いをした。
「わたくしの誕生日のちょうど一週間前のことです。バルコニーに出て星空を眺めていると、空から一人の女の子が降ってきたのです……」
わたしが再び話しはじめれば、目の前の二人は表情を真面目なものに戻して耳を傾けてくれた。
それを見て、わたしは今までの経緯を順々に話していく。
レイナが現れたこと。
彼女の身体は潰れて、人格のみがわたしの身体に入っていること。
それから、頻繁に意識が入れ替わるようになったこと。
「……というわけなのです」
わたしが全てを話し終えると、おじさまは「うーむ……」と玉座に背を預け、考え込んでしまった。