第7章 交差する思い〜リンドブルム〜
ガーネットside.
目が覚めた。
ひらひらと揺れるピンクのカーテンに、光が透けている。
少しばかり視線をかたむけると、格子状の窓から眩しいほどの太陽がのぞいていた。
「朝……?」
声を出す。
わたしの声だった。
それで気づく。
そうか……今は、わたしがこの身体を動かしているんだわ。
『んん……』
わずかに聞こえたうめき声に、心の中でそっと挨拶を呟くと、彼女の、レイナの声が返ってきた。
『おはよう……って、あ、入れ替わってたんだ……』
レイナはふわりとあくびのようなものをすると、何かを思い出したように大きな声を上げた。
『そ、そうだ!! 私、気絶しちゃって……ダガー、ごめん!! シドさんとせっかく話せる機会だったのに……なのに私……』
尻つぼみになっていく彼女の声に、わたしは気にしていない、と声をかけた。
彼女がブリ虫が大の苦手であることは知っている。
あのサイズのブリ虫を見たら、彼女では耐えられないだろうことも理解できた。
なにより、彼女の心がそれを訴えていたのを昨日実際に感じたのだから、許すほかない。
ベッドから下りてみる。
今度はふらついたりはしない。
わたしが実際に身体を動かすのは……あの村以来かしら。
レイナと身体を共有するようになって、初めはレイナのみが身体を動かしていたけれど、氷の洞窟で交換されてから頻繁に意識が入れ替わるようになった。
どういった仕組みになっているのかはわからないけれど、ずっとこのままというわけにもいかないだろう。
相手の心の内がわかってしまう、という問題もある。
シドおじさまにレイナのことも相談してみようかしら。
そんなことを思っていると、レイナが『それがいいかもしれない』と頷いてくれた。
そこで初めて、自分の考えていることがレイナにわかってしまうのだと本当の意味でわかった気がした。
自分がふと考えたことが他人に伝わるというのは、けっこう恥ずかしいものだわ。