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王女様に祝福を【FFIX】

第7章 交差する思い〜リンドブルム〜




二人の兵士が守る厳かな扉をくぐると、そこは広いホールのような場所だった。
 
オルベルタさんは部屋の中央まで進むと、奥に控えている玉座に向かって頭をさげた。

 
「殿下、アレクサンドリアより、ガーネット姫が参られました」
 
 
ついにシド大公殿下との謁見。

少しばかり緊張する心を抑えて、私もいつの日かにダガーから習った王族の礼をしようとして……とまどう。


「いかがなされました?」
 
「王座に誰も座ってないの……」
 
 
どういうことだろう。
 
広い部屋には立派な椅子はあるけれど、肝心の人がいない。

この国の大公殿下なる人を私は見たことはないけれど、誰もいないんじゃあ見分けをする以前の話だ。


後から入ってきたスタイナーも怪訝そうにあたりに視線を巡らせている。


「ん?」
 

探すように動いていた視線は王座で止まった。

正確に言うと、王座の後ろで、だ。

 
「んん!?」
 
 
王座の後ろに何かがいる。
 
人の頭ほどの大きさの生き物は、ぴょこんと王座を飛び越えて出てきた。

 
「ブリブリッ」
 
 
なんとも形容しがたい、聞き覚えのある音。
 
ぞわりと背筋がざわめいた。

 
「ひさしブリー!」
 
 
ぞわぞわ……ぞわ……。
 
ぴょこんぴょこんと跳ねながらこちらに向かってくるのは、巨大な……巨大な……。
 

「ブ、ブリ虫ぃーーっ!!」
 
 
スタイナーが拳で思いっきり殴ると、その油ぎった身体はぐえっと王座にひしゃげた。
 

その潰れるような音。

テラテラと光る身体。

うりうりと揺れる二本の触覚。
 

ごめんなさい……私、もうダメです。

 

後から聞いた話だけれど、その時の私は白目を剥いてぶっ倒れたらしい。
 
ごめん、ダガー。
 
 

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