第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
プスンプスンとガス欠間際のようなエンジン音を聞きながら、船をしばらく飛ばしていると、やがて巨大な建造物が見えてきた。
私達の乗っているような船が、何隻も建物に向かって飛んだり、出てきたりしている。
アレクサンドリアの空には、行き来する飛空艇の姿はそこまでなかったけれど、リンドブルムでは空の移動手段がかなり浸透しているみたいだ。
カーゴシップのすぐ横を、パラパラと音を立てながら、細長い船が通り過ぎていく。
「あれがリンドブルム城でありますか!? なんと巨大な……」
『リンドブルムはお城の中に街があるのよ』
ダガーの言葉どおり、巨大な建造物は、その周りをぐるりと頑丈そうな塀で覆っていた。
近づくにつれ、その塀の高さが顕著になる。
……これは大きい。
これなら、城下町すべてを囲んでいると言われてもうなずける。
『目の前に、大きなゲートがあるでしょう? あそこが空の玄関なの』
なるほど。
確かに、塀の途中にゲートのような、大きな門のようなものがあった。
さっきから感心しっぱなしのスタイナーと一緒に、私もうなずく。
「……おねえちゃん」
ふいに、ビビが顔をあげた。
「ボクと……あの黒魔道士って呼ばれた人達って……おんなじ……なのかな?」
ピシリと、空気が凍ったように感じた。
私は息をのむ。
先ほどまでの3号との戦闘を思い出す。
彼の放ったスパークによって、弾けとんでいった、黒魔道士達の身体。
黒魔道士達と、さらに言えば3号と……見た目だけで言えば、ビビは限りなく近い。
ビビも……彼ら同様、作られた身なのか……。
それに、3号は黒魔道士達を、黒魔道士兵と呼んでいた。
アレクサンドリアが兵器としてそれらを作っている、とすれば……。
そんな考えがちらつく。
ビビだって、思ったはずだ。
だから、今の今までずっと考えていた。
考えて、考えて、考えて……わからなかったんだと思う。
だから訊ねた。
そんなの……私だってわからない。
何て答えればいいんだろう……。