第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
「ちょっとムリさせすぎたみたいだな」
ビビを引き上げたジタンは、操縦室に入ると、エンジンの前にしゃがみ込んだ。
それから、私達から返答がないとわかると、立ち上がり見回す。
「どうしたみんな? 黙りこくっちゃって! 無事に3号を振り切ったんだ、もっと喜ぼ〜ぜ!」
なんてことだ。
ジタンは鋼の心臓を持っているらしい。
『……南ゲート、あれでは当分動かないわ』
「ジタン、私達……大変なことを、しちゃったんだね……?」
考えてみれば、私達は公共の関所を強行突破したんだよな……。
その上で、ゲートを破壊するほどの爆発。
かじを握っているから見ることはできないけれど、あの巨大な爆発音から考えると、被害はそうとうなものだと思う。
私の呟く声は、自然と震えた。
「リンドブルムの技術ならすぐに直るって! 大丈夫!」
ジタンに励ますように言われる。
君は、なんてポジティブなんだ。
「なにが大丈夫か! カーゴシップはガタガタ。積荷はなくなり、南ゲートは損壊! あまつさえ、この自分が盗賊の片棒をかついでしまうとは……」
「スタイナー」
私は久々に、ガーネット姫らしき凛とした声を引っぱり出して、呼びかける。
「はっ」
「スタイナーを巻き込むつもりはなかったのですが……でも、おかげで助かりました」
傍らで膝をつくスタイナーに向かって、微笑む。
「ありがとう」
「なんと姫さま! もったいないお言葉です!!」
スタイナーは派手に驚くと、うやうやしく敬礼をした。
かなり芝居がかった動きに見えるけれど、これは彼の素だろう。
「ええい、こうなれば覚悟を決めました!! 城にお戻りになられる日まで、このスタイナー、お供させていただきます!!」
「ダガー、いいのか? こうなったらこのおっさん、地の果てまでだってついてくるぜ?」
「……ありがとう、ジタン」