第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
スタイナーが慌てたように、操縦室に入ってきた。
何事だろう……。
「姫さま! 今すぐかじを反して下さい!! 先の黒のワルツめが、妙な飛空艇にのって、後方から迫ってくるのであります! あれは、何をしでかすかわからん勢いでありますっ!!」
ジタンも慌てて操縦室を出る。
「ダガー、おっさんの言う通りだ! アイツが迫ってきた!! 全速前進で南ゲートに向かってくれ!!」
「いいかげんなことを言いおって! ゲートが閉じたらどうするのだ!?」
「パワーだけのでっかい飛空艇が小回りの利く小型艇をかわせるかよ!! あの3号を避けるのはムリだ! だったら逃げ切る、閉じる前にくぐる! それに賭けよう!!」
3号は皆が追い払ったはずなのに……まさか追いかけてくるなんて。
ジタンの強い言葉に、スタイナーは反論するのをやめた。
それだけ、3号の追いかけてくるスピードが凄まじいものなのかもしれない。
「おっさん! あのレバーをひいてくれ」
ジタンの指示に従って、かじの隣りにある大きなレバーをスタイナーは横に引く。
「ダガーはかじを今の位置で押さえてくれ!」
どうしよう……私にできるのか不安になってきた。
こんな大一番の仕事を自分が任せられるなんて、生まれて初めてのことだ。
いや、大丈夫。
いざとなれば、きっとジタンが助けてくれる。
私は深く息をはくと、応えた。
「……まかせて!」
「この出力なら、迷わず行けばきっと間に合う!!」
加速するように、エンジンが唸り声をあげる。
かじが重くなってきて、手のひらに力を込める。
『大丈夫……レイナならできるわ!』
ダガーの声に励まされる。
いつだってダガーは、頼りない私のことを応援してくれる。
彼女の期待に応えたい……私も、頑張りたい。