第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
ジタンside.
バタリと倒れると、3号は拳をにぎる。
「おのれ……おのれ、おのれ、おのレェッ!」
バサリと大きく羽根が動いた。
「我の存在理由ハ勝ち続けルことのみ!!!」
奇怪な捨てゼリフを残し、わずかに残った力で3号はその場から飛び立っていった。
皆ほっとしたようにその場に座り込む。
途中、危ない場面もあったが、無事追い払えたようだ。
「しかし、次から次へと……黒のナントカは何人いるのであるか!? キリがないのである!」
「今ので最後だと思うぜ」
オレが立ち上がり、そう言うと、おっさんは怪訝な瞳でこちらを睨んできた。
「なぜそう言い切れる! さてはきさま……!?」
「ワルツって名乗ったろ? だから、3号で打ち止めと思ったのさ」
「??」
おっさんは王家直属の騎士であるにも関わらず、ダンスに明るくはないようだ。
オレはぐっと背伸びをする。
前方に視線をやれば、まだ遠くの方だけど南ゲートが見えた。
ダガーはリンドブルムへ行くと決めたんだ。
……リンドブルムに着けば、ダガーとの旅も終わり……なんだな。
いい感じになってきたのになぁ……。
彼女の見せる、ちょっとした表情に惹かれる自分は、確かにいた。
彼女が笑えば嬉しいし、ムッとした顔を見るとからかいたくなる。
頑張っている姿を見れば、応援したいとも思う。
オレってば、けっこう本気?
おいおい、相手はお姫様だぞ?
でもダガーの方も、少なからずオレに好意を寄せてくれてると思うのだ。
いや、感触的に、オレのことけっこう気になってると思う。
もう一押しだと思うんだけどなぁ……ま、リンドブルムに着いたらデートにでも誘ってみるか。
でも、それもこれも、彼女をリンドブルムまで無事に送り届けてからの話。
国境を越えるまでは、まだ油断ならない。
南ゲートを見据え、オレは「よし!」と意気込んだ。