第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
「なんたる非道っ!!」
スタイナーの憤りの声で、堰(せき)が切れたようにビビは頭を振り回した。
「……ぅぅうわああ!!!」
今までに聞いたことのないような、錯乱した声。
ビビはそのまま小屋を飛び出した。
「ビビ殿、助太刀いたすっ!」
追いかけるスタイナーに、私も続こうとした。
許せなかった。
許せるはずがなかった。
「ダガー!!」
「っ!?」
ジタンに腕を掴まれる。
「黒のワルツはオレ達がなんとかする。それまで、ダガーはかじを支えててくれ」
それは、私にはここで見ていろってこと?
確かに私では戦闘の足でまといかもしれない。
「……でもっ!」
腹の底でくすぶる、激情の行き先をどうすればいい。
黒魔道士達の焦げ切れた姿が、脳裏に焼き付いて離れない。
「ダガー、その気持ちは皆一緒だ。あいつは許せない。だけどダガー、君はリンドブルムに行かなきゃならないんだろ? だったら、ここでかじを取る人が必要なんだ……わかってくれ」
ジタンの落ち着いた声が、私の浮き上がっていた心を落ち着かせる。
『レイナ……わたくし達は、わたくし達のすべき事をしましょう』
…………私の今やるべき事は、かじを取ること。
それは結果的に、皆の役に立つ。
そうか、そうなんだ。
私はこくりと頷いた。
「よし、いい子だ」
ジタンは私の頭に手を乗せると、前を見据える。
「これから危険はふえるだろう。でも今なら、まだ戻れる。このまま国境の南ゲートに進むか、かじを戻して城に帰るか、ここはダガーが、自分で決めるんだ!!」
『自分で……』
それから、ジタンはいつもの笑みを浮かべると、小屋から飛び出した。
「どっちにしても俺がついてる! 船をふらつかせないように、頼んだぜ!」
「……気をつけて、ジタン!」
私が声をかけると、ジタンは振り返らずに手を振った。