第2章 家出騒動
開けたバルコニーからは賑わった街、アレクサンドリアの様子が一望できる。
夜空には赤と青白い二つの月。
今日はガーネットの誕生日だった。
人気の劇団が来るとあって、劇を一目見ようと城近くの民家の屋根にまで見物人が集まっている。
城の広場に並べられたイスには、裕福そうな人達が座っているのが見えた。
前を歩いているベアトリクスがロイヤルシートへとエスコートしてくれる。
ベアトリクスというのは、私がこの世界に落ちてきてすぐに食事を持ってきてくれた、あの美人な剣士さんだ。
彼女、なんとこの大陸で一番の腕前を持つと言われる剣士らしく、アレクサンドリアの騎士団長も務めている。
地球だったら人間国宝などと世間を賑わせたかもしれない、とにかくすごい人だった。
ベアトリクスともこれでお別れか。
短い間だったけど、彼女はとても優しくしてくれた。
少し寂しい。
「ベアトリクス、いつもありがとう」
これくらいのお礼なら不自然じゃないよね、と今までの感謝を込めて私が微笑むと、ベアトリクスは少し驚いたように目を見開いた。
今改めてお礼を言われるとは思っていなかったのかもしれない。
「私にはもったいないお言葉です」
彼女は深々と頭を下げると、そのまま立ち去っていった。
警備の指示とか、色々忙しい身なのだろう。
なんと言っても彼女はこの国の騎士団長なのだから。
そう言えば、このアレクサンドリア王国では兵士のほとんどが女の人だ。
ベアトリクスの影響もあるのだろうか。
そこら辺に立っている兵士達に目をやると、そのほとんどが女の人だ。
女兵士は足の付け根ギリギリのレオタード鎧が主流なので、すぐに女の人だとわかる。
防御力とかその辺どうなっているのか心配になるけど、まあ身軽ではある。