第2章 家出騒動
とうとうやって来ました、誕生日。
いやもう、この一週間はとてつもなく大変だった。
人生で一番勉強したかもしれない。
意外とスパルタなガーネットの教えにヒイヒイ言いながら、お作法からなにから、なんとか及第点を貰えるくらいには身についた。
その過程で知ったことだけど、ここはどうやら剣と魔法の世界。
つまり異世界というやつらしい。
これが勘違いでも夢でもないことは、実際に魔法を見たことで証明されてしまっている。
すごかったよ。手から炎が出たりしてた。すごい迫力だった。
それにガーネット自身も回復魔法の使い手らしく、私も魔法を使っちゃったのだ。
この世界では白魔法と言うらしい。
あとこの世界は亜人だったり、色々な特徴を持った人たちがごっちゃになって存在しているようで、城内でもクチバシを持った人とかが歩いているのを度々見かけた。
この大陸には三つの国があるのだけど、その内の一つ、ブルメシアという国はなんとネズミの国なのだとか。リアルネズミーランド。
いつか行ってみたいなあ。
あとそうそう。ガーネット、驚いたことに私と同い年だったらしい。やっぱり王女様だと違うのだろうか。
私と比べると、かなり大人っぽい。
だからガーネットのような大人の女性の振る舞いを身につけるのは大変だった。
でも今では美しく微笑んだりできる。これも努力の賜。
『レイナ、今日の流れ、覚えてるわね?』
頭の中にガーネットの声が響く。
もちろんですよ、ガーネット。
今日のために何度確認してきたことか。
そう、今日私は家出するのだ。
これから見る劇の途中で、具合が悪い振りをして退席。そして部屋で着替えて劇場艇に忍び込む。
『ええ、合ってるわ』
とにかく、緊張して失敗しないようにしなければ。
そんなことを考えていれば、王室の観劇席に着いたようだ。