第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
「それより、ビビが……」
ふっと視線をビビに移すと、ジタンは呼びかける。
「ビビ!」
呼びかける。
「ビビ!!」
ハッと気づいたビビは振り向き、肩を落としながらこちらに戻ってきた。
「話はできたのか、ビビ?」
「ううん……だって、ボクのこと、見えてないみたいだから」
ゆるゆると首をふったビビは、そのとんがり帽子を握る。
「何度も、何度も、話しかけたけど、振り向いてくれないから」
「ビビ……」
なんて声をかければいいんだろう。
わからない。
ろくな言葉も思いつかない私はただ黙ってビビのことを見つめた。
「わるいけど、ちょっと上に行かなきゃならないんだ。放っておくと、城に着いちゃうからな……ビビのこと、頼むよ」
ジタンはそう言って、エンジンルームから去って行ってしまった。
残ったのは、ビビと私と……あとはそこらを動き回る無機質な人形達のみ。
「ビビ……」
なんで私はこんな時、なにか励ます言葉が思いつかないんだろう。
ジタンだったらこういう時、心が温かくなるようなことを言って勇気づけてくれるのに。
私……なにも思いつかない。
私はただ、ビビの手を取りぎゅっと握った。
俯いていたとんがり帽子が上がって、その金ピカの瞳が覗く。
ごめんね、私はビビを元気づけてあげられる言葉は持ってないから……だから、こんなことしかできないけど。
再びぎゅっと手を握ると、ビビは照れたように笑ってくれた。
「うわぁ!」
突然、船が大きく横に揺れた。
「わっ、ビビ!」
転びそうなビビを支えようとして、バランスを崩した私も転がる。
二人で壁にぶつかると、大きく左にかかっていた重力は治まった。
「なんだったんだろう……ビビ、大丈夫?」
「うん、へいき……今のすごかったね」
「上で何かあったのかな? 私達も行ってみようか」
「う、うん」