第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
入ってすぐの所にビビが立ち止まっていた。
どうしたの?
声をかけようとして、私自身も目の前の光景に唖然とする。
「うそ……」
村の地下で作られていた人形達が動いていた。
エンジンルームであろう船内を、彼らは自身の手足を動かしあっちへこっちへ移動する。
『……動いてる?』
重音の響く機械をいじっているようだった。
彼らは、この船の従業員なのか?
他に誰もいないから、きっとそうなんだろう。
目の前で小さな肩が震えていた。
支えてあげたい……湧き上がる気持ちに手を伸ばしたけど、私の右手は空をきった。
「ビビ!」
その小さな背中は走り出して、歩き回っている人形のうちの一人に話しかける。
「あ、あの……!」
スタスタと歩く人形は止まる気配はない。
他の人形にも同じように話しかけるけれど、ビビの声に振り返る者は誰もいなかった。
こんなの……見ていられない。
私は扉を開けてジタンを呼んだ。
「どうした? 何かあったのか!?」
扉の先、驚くジタンの顔。
「ビビが……」
「ビビが!?」
急いで船内に入ったジタンも、その光景に圧倒される。
「驚いたな……動いてる。ダリ村で作った人形を同じ人形が運んでいるのか」