第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
「わざとじゃないし、そんなに怒らなくても……」
しらっとした目でジタンを見ていた私は、ふいっと視線をそらす。
「別に……怒ってないけど」
「ほらほら、眉寄ってる」
失礼な!
私の眉は寄ってませんよ!!
と触ってみると、ジタンの言う通り皺が寄っていて慌てて揉みほぐした。
いけない、皺は癖になると取れなくなるっていうからね。
ダガーの身体だから気をつけないと。
そもそも、ジタンがどさくさに紛れて私の、というよりダガーのお尻を触ってきたのが悪い。
お姫様のお尻を触るなんて、不埒極まりない!
ふと、クスクス笑う声が聞こえた。
ダガーだった。
な、なに?
私が尋ねれば、ダガーは『いえ、なんでも』と笑いながらその理由を言わない。
なんか変なこと思ったかな、と首をひねっているとのぼっていた血が冷めてきた。
ふと柵からぼーっと空を眺めているビビに気づく。
「……ビビ、大丈夫?」
「なんだか、すいこまれそう……」
ビビの言うとおり、雲の上に出た飛空艇は眺めがよく、少し下に見事な雲海を臨めた。
いや、一面に広がるこれは……霧?
厚く連なった霧に、飛空艇の影が写っている。
「わぁ……」
なんだか素敵。
それに流れてくる風も気持ちよかった。
ただ、柵が低くて簡易なものだから少し怖い。
「中に入ろう、ビビ」
頷くビビと共に船内へ続く扉を開ける。
「えっと、ダガー……」
振り向くと、ジタンが気まずそうに頬をかいていた。
私が空を眺めている間も、ジタンはずっと気まずい思いをしていたのかと思うと、なんだか少し笑ってしまう。
「もう怒ってないよ。私達先に入ってるね」
「ああ」
ほっと息をつくジタンを横目に、船内へ足を向けた。