第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
再び宿へ戻ると、宿の主人は相変わらず机に突っ伏して寝ていた。
ビビが誘拐されてから、地下のアレを見てから……どうにもこの村の人達を胡散な目で見てしまっていけない。
「よく寝てるな……」
ジタンがそっと叩くと、主人は汗々と起き上がる。
「ああ、こりゃどうもすいませ…………んんっ?」
主人は目を見開いて……ビビを見てる?
そうか、この村ではビビそっくりの人形を作っているから、動いてるビビを見て驚いてるんだ。
「おやじさん、かわいいからって見とれてもらっちゃ困るなぁ……」
「いっいえ、お嬢さんではなくて……あ、いやいや、どうぞどうぞ!」
ジタンはあんまり分かってなさそうだったけど、私は慌てる主人に冷ややかな目線を送り、奥の部屋へと入った。
飛空艇に乗り遅れても困るので、荷物だけ取ってさっさと飛空艇の元へ私達は戻る。
どうやらこの飛空艇は貨物船らしく、ジタンが乗せてもらえないか説得しに行こうとすると、スタイナーが慌てたように自分が! とその役に立候補した。
「へぇ、おっさんが? どういう風の吹き回しだい?」
「ひ、姫さまのことを思えばこそである! 貴様のためではない!!」
そう言って、スタイナーはガシャガシャと鎧を鳴らして走っていった。
「スタイナー……リンドブルム行きには反対してたのに……」
ずいぶん協力的じゃない?
堅物でまっすぐなスタイナーのはずなのに、どうしたんだろう。
『スタイナーは反対していた……城で見た樽を積んでいる……』
ダガーの呟きに、私も気づく。
「ジタン……この飛空艇、本当にリンドブルムに行くのかな?」