第6章 放たれた刺客〜カーゴシップ〜
箱の中は狭くて窮屈で、度々訪れる振動に動かせない身体がいいかげん悲鳴を上げていた。
もう、これどこまで運ばれるの!?
そろそろ手足が痺れてきて限界なんだけど。
村の地下から揺れることしばらく、グッグッと色んな方向を押してみているけれど、一向に箱が開く気配はない。
ああ、私このまま箱詰め人間になって死ぬんだ、と心が弱ってきた頃、ふと聞き慣れた声を耳が拾った。
「うむむむ、あからさまに怪しい……こんな村から、いったい何を運びだそうというのだ!?」
この声、スタイナーじゃない!?
うわーん、助けてぇ!!
もう身体が限界なんだよぉー!!
力を振り絞って暴れると、箱が僅かに揺れた。
「ぬおっ!? 今、樽が動いたように見えたが……」
この調子で!!
もう一回暴れようとして、
「はっ!」
ギラリ、鋭利な刃物が肩を掠めた。
「ひえぇぇっ!!!」
「いってーーーーーーーっ!!」
近くで木の割れる音が大きく響く。
それと同時にジタンの叫び声。
「普通刺すか? いきなりっ!?」
サス、さす、刺す!?
まさかスタイナー、剣刺したの!?
さっきとは別の意味で身体が縮み上がる。
「なっ、貴様!!?」
「ダガーに刺さるとこだったぞっ!」
「姫さまが!? おぶっ!」
ジタンがもう外に出てるみたいで、二人のやり取りが聞こえる。
そんなことより、私も早くここから出たいよ!
「ジタン〜! 出して〜!!」
「ボ、ボクも!!」
「ダガー、ビビ、ちょっと待ってろよ!」
ガタガタと揺れる音を間近に聞いていると、べキッと板の剥がれる音と同時に明かりが広がった。
「うわっ!」
突然自由になった身体は、箱を開けてくれたジタンの上に倒れこみ、彼を押し倒してしまう。
「……ててっ、大丈夫か、ダガー?」
「う、うん。ありがと……うへあっ!!」
や、やばい!
身体のあちこちが、痺れて、動けな……っ!!
「ぅひゃ!!」
「えっ、ちょっ、ダガー!!?」
「ひっ! ちょっとジタン、動かなっ!! ぅああ!!」
「…………」
しばし後、顔の真っ赤になったジタンの上からおりると、彼は無言であと一つ残った箱の解体作業に取りかかった。