第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
ベキッ!
板の割れる音と共に、ドテッと床に倒れ込んだのは、紛れもなくビビだった。
「ビビ!!」
駆け寄り、抱き起こす。
その金ピカの瞳をまだチカチカさせているビビを、私は抱き寄せた。
「お、お姉ちゃん!?」
「よかった、無事で…………」
しばらくビビの無事をかみしめていると、ビビに背中をタップされ、ジタンにじっと視線を送られた。
私はすごすごとその身体を離す。
やっちまったか?
いや、だけど後悔はしてない。
ジタンに強く視線を返すとため息をつかれた。
「…………それで、何があったんだ?」
ジタンが尋ねると、ビビはその視線を落として、やがてぽつりぽつりと語りだす。
「ジタンと別れた後……男の人にむりやり連れてこられたんだ……“動くな”って言われたから、ボク、すっごく恐くて、恐くて……動けなかったんだ。“なんで外にいたんだ?”“カーゴシップはまだ来てないのに”って聞かれて……ボク、なんのことだかわからなくて、答えられなくて、黙ってたら……“今日の分に入れておこう”……って」
「それで、あの箱に……入れられたの?」
「……うん」
コクリと頷くビビ。
ひどい話だ。
人を箱に閉じ込めるとか、ほんと意味がわからない。
この世界には人権ってものがないのかな?
ちょっと信じられない。
「でも、無事で良かったよ」
「本当にね、心配したんだよ」
「いいか、ビビ。これからは黙ってちゃダメだ。そうだな……いざというときは、自分から大声を出してみるんだ」
「自分から……?」
「ああ、たとえば……」
首を傾げるビビに、ジタンは少し考え、バッと手を広げて叫んでみせる。
「いいかげんにしろよなコノヤローッ!!」
『コノヤロー?』
「って、感じかな。相手を驚かすだけじゃない。勇気もでてくるぜ!」
「勇……気」
噛み締めるように、ビビはその言葉を呟いた。