第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
「ビビ! あの野郎」
出ていこうとするジタン。
遠ざかるビビ。
「ジタン、待って!」
「とっ、とと……」
飛び出していこうとするジタンの腕を掴む。
元々隠れていた暗がりに引き込むと、ジタンは驚いたようにこちらへ振り返った。
「どうしたんだ!?」
ジタンの肩越しに向こうを見れば、男性に連れられたビビの姿が通路の奥へと消えていく。
ごめんよ、ビビ。
でもダガーの頼みは断れない。
それにダガーの気持ちも分かるのだ。
変わってしまったダガーの母親、ブラネ女王。
その理由となるヒントが、ここにあるかもしれない。
ジタンの腕を離して、彼にもここを調べていけないか、事情を含ませながら説明する。
私の説明を聞くと、ジタンはその驚きの表情をだんだん納得の色に変えて、最後には頷いてくれた。
「…………わかった……でもビビが危ない目にあいかけたら、オレは騒ぎを起こしてでも助ける。それでいいかい?」
ジタンの意見にはもちろん賛成なので頷く。
「よし、じゃ急ごう! あいつら奥に向かったみたいだ」
ビビを連れて先に進んでいった男性二人。
彼らはおそらくこの村で大人と区分けされる人達だろう。
ここに村の大人達がいる。
どんなことをしているのか、想像するだけ謎に包まれており、薄暗い通路に漂う冷たい空気と相まってブルリと震える。
グッと唾を飲み込むと、先を進むジタンの背中を私は追いかけた。