第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
「泣き声……?」
「シクシク……」
メソメソとした声は、どうやら地面に開いた拳ほどの太さのパイプ穴から聞こえているようで、試しにジタンがビビの名前を呼びかけると、驚くことに泣き声は止まった。
「……ジタン?」
その上、返ってきた声は明らかにビビのもの。
なんでビビの声がこんな穴から聞こえるんだ。
瞬時に私の頭を埋め尽くす、
誘拐、
拉致、
監禁、
そんな物騒なテロップの数々。
サアッと血の気が引いていく。
「ビビ!? 大丈夫なの!?」
焦る私とは反対に、ジタンが比較的冷静な声で尋ねていく。
「やっぱりビビか! どこにいるんだ!? 地下か? 動けないのか!?」
「さっきまで人がいて……ここから出るなって言われた」
「ケガはないか?」
「うん」
「わかった。今からそっちに行く……なるべく早く行くから、おとなしくしてるんだぞ?」
「……うん」
しゃがみ込んでいたジタンが立ち上がる。
『とりあえず、無事でよかったですね』
ビビは無事、それは良かった。
でもビビが閉じ込められている。それも地下に。
なんで、ビビが?
どうして?
「ど、どうしよう……」
「落ち着けダガー。今のところビビは無事みたいだ。大丈夫、オレ達でビビを助けに行こう!」
「…………うん」
ビビが地下に連れ去られた。
けど今はまだ無事。私達で助けに行けばいい。
大丈夫、ジタンもいる。
現状を自分に言い聞かせると、少し落ち着いてきた。
「きっとこの村のどこかに地下への入口があるはずだ。それを探そう!」
コクリと頷くと、さっそく手近にあった小屋の扉を開けた。
部屋の中央で回る大きな柱のようなものが目を引くけれど、今の私達にはもっと気になるものがこの部屋にはあった。
「へっ、いかにも地下へ続いてますって感じだ……」
床に設置された半円形の蓋のようなもの。
いかにもなそれを持ち上げてみると、そこには地下へと続くハシゴがあった。
流れる冷たい風が頬を撫でる。
私達は顔を見合わせると、そのハシゴを下りていった。