第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
これから私たちの向かう場所は、ダガーの目的地であるとともに、ジタンの暮らす街でもあるんだ。
アレクサンドリア城から眺めた景色を思い出す。
城を取り囲む水路の向こう、レンガ造りの家々が立ち並ぶ。
リンドブルムはどんな場所なんだろう。
新しい場所に思いを馳せるのはわくわくする。
『リンドブルム、わたしも訪れるのはずいぶん久しぶりだわ』
ダガーはリンドブルムに行ったことがあるんだね。
『お父様がリンドブルムのシド大公様と親交があったから、わたしも連れて行ってもらったことがあるの。まだわたしが幼い頃、お父様も生きていた頃にね』
私がこの世界にやってきて、ダガーの身体に入って、一番に望まれたこと。
ダガーのお母さんの異変を伝えるために、リンドブルムにいるシド大公に会いに行く。
それは今の私の使命でもある。
「────それで誘拐の依頼があって……ダガー、君に出会えたのさ!!」
ジタンはそう言って、大業に腕を広げて見せる。
私から訊ねたことだったのに、途中から上の空になってたみたいだ。
申し訳ない。
「そうだね、私もジタンに会えてよかったよ」
「えっ!?」
ジタンに会えてなかったら、ここまで来れていたかどうか。
「ここまで一緒に来てくれてありがとう、ジタン」
私がお礼を言うと、ジタンは照れたように視線をそらした。
「そんなお礼を言われるようなことじゃ……オレがそうしたいからしただけで……それよりさ、南ゲートを越えるうまい手を考えたんだ」
南ゲートといえば、昨日話題になっていたあれか。
国境を越える上手い方法を思いついたってことだよね?
「城の連中はダガーだけをさがしてるから、目立つダガーを隠せばいいんだ。平和な世の中だからな、きっといける!」
ジタンはその場でくるりと宙返りしてみせると、綺麗にベッドに着地した。
「だから、オレが必ず、ダガーをリンドブルムまで連れてってやるぜ!」