第5章 風車小屋に隠された秘密〜ダリ村〜
宿へと戻る道中。
通りを走りまわる子ども達を横目に、私は気になっていた疑問を口に出した。
「ねぇ……ジタンって、やっぱり盗賊なの?」
「ああ、そうだぜ」
あっけらかんとジタンは答える。
「劇を演じてた人達、皆?」
「オレ達はタンタラスっていう盗賊団なんだ。劇を演じてたのは皆仲間さ。ゴーグルをかけた人一倍大がらなヤツが、オレ達のボスだぜ」
「あの王様役だった人ね」
そういえば皆からボスって呼ばれてたもんなぁ。
今頃、皆はどうしてるかな。
少しの間だったけど、スタイナーから逃げる時にお世話になった仲だ。
そういえば、劇場艇から落ちてしまってそれっきり。
魔の森は抜けられたのだろうか。
「大丈夫、悪運の強いやつらだ。今頃は森を抜けてどこかでバカやってるさ」
私の不安を見抜くように、ジタンは笑ってみせる。
「それにしても、この村もずいぶんと変わったな……」
ふと呟くようにジタンが口を開いた。
そういえば、ジタンはこの村に来るのは初めてじゃないんだっけ。
「そうなの?」
「前に来た時は村のそばに一面の畑があったんだ」
一面の畑?
「すごく小さな畑しかなかったよ」
「だろ? それに……」
バタバタッと騒がしく駆け回る子ども達にジタンは目をやる。
「大人の姿が見当たらないのが気になる。前だったらその一面の畑で働いてたんだけど……」
そういえば、どこの店も店員さんは皆、せいぜい私と同い年くらいの子どもだった。
大人といえば、宿屋の主人と、あとは畑のおばあさんくらい。
子どもの数と大人の数がどう考えてもつり合っていない。
ジタンは頷くと、神妙な面持ちで顎に手をやった。
「この村は……何かありそうな感じがする。ビビと合流したらすぐに出発しよう」