【うたの☆プリンスさまっ♪】あなたの全てが好きだから
第4章 自分の想いと彼の願い
ーー地元のとあるカフェ。準備を済ませた私はある人物と待ち合わせをしていた。お店の外にあるカフェテラスにその人物は座っていた。
「……」
私は黙ってその人物に近付いた。
「……遅れてごめんね」
「! 桜さん」
その人物はキャップを目深に被り、サングラスをしていた。
「呼び出してしまって、すみません」
「ううん。ちょうど仕事もひと段落したところだから大丈夫だよ」
私はニコッと笑って言った。
カラーコンタクトを付けている瞳がサングラスの奥からこちらを覗く。
「それよりも、蘭丸くんはいいの? ライブもあるから忙しいんじゃないの?」
「ライブは来月までないんすよ。今はCMの撮影で、たまたま桜さんの地元の近くに来たから会いたいなって思って……」
「そうなのね」
私は少し苦笑いのような笑みを作ってしまった。
(昨日の今日で他の仕事もあるなんて、本当に忙しいんだな……)
「……桜さん、立ってるのもなんなんで座ってください」
「あ、そうね。ありがとう」
蘭丸くんの気遣いを受けて、私は彼の向かい側の席へ腰を下ろした。
「昨日はすみませんでした」
「え?」
私が椅子に座るなり、蘭丸くんは私に頭を下げた。