【うたの☆プリンスさまっ♪】あなたの全てが好きだから
第3章 思いがけないメール
「そっか……残念」
嶺二は眉尻を下げて、肩をすくめた。
「……」
ーどうして、そんな顔をするの?
「嶺二……」
「あのことがあったから?」
「……」
嶺二は先程までの雰囲気とは打って変わり、真剣な瞳を向けてくる。
「……あのことは関係ないわ」
「それなら、戻って来てもいいんじゃないの?」
「……」
ー本当にこの男は……。
「あんた、私があの時なんて言ったか覚えてるの?」
わざとキツい言い方をして突き放す。ーー本当に私は変わらない。
「もちろん、覚えてるよ」
真剣な瞳の中に、一瞬だけ悲しそうな色が漂った。
「……あの言葉を言われても……何で……」
「僕が戻って来てほしいから」
ただそれだけだよ、と嶺二は付け加えてにこりと笑った。
「……」
ー本当にこの男は読めない。昔からそうだったが、そこは本当に変わらない。腹の中で何を思っているのか全くわからない。
「……悪いけど……何度言われても、私の気持ちは変わらないから」
「……うん、わかった」
ふーと息を吐いて、嶺二はいつものアイドルの顔に戻った。
「……桜、行くか」
「……はい」
私は控え室を出ようとした。
「ねえ、桜」