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怠惰症候群

第3章 雪解け


香苗は携帯をカバンに戻すと、立ち上がって大きく伸びをした。
「帰ろうか。」
「そうですね。」
啓太もまた立ち上がって背中を反らす。
「車で来てるから送るよ。」
香苗はパソコンをシャットダウンさせた。
「おっ、マジっすか。やった。」
啓太は軽い足取りで帰り支度をする。
機械の電源が切られ、低い稼働音が息をひそめた。


部屋を片付け、身支度を整える。
「あーぁ。明日こそ研究が進むといいなー。」
「原田なら大丈夫だよ。そのうち上手くいく。」
香苗の発言に、啓太は頬を膨らませる。
「そのうちっていつですかー!?」
「うーん、1週間以内?」
適当に答えた香苗だったが、途端に啓太が悪戯っぽく笑う。
「じゃあ香苗さん、1週間以内に上手くいくように手伝ってくださいよ。」
「はぁー!?あたしだって研究で忙しいんだぞ!?」
コートを着込む手を止めて香苗が憤慨する。
「いいじゃないですか。俺の研究を手伝う事で、香苗さんは1人じゃなくなる、俺は研究が進む。ほら、良い事尽くめ。」
両手を広げてにぱっと無邪気に笑う啓太に、香苗は呆れ返ってしまう。
「あんたねー・・・まぁ手伝ってやるけどさ。」
「やった!」
啓太がガッツポーズを決める。香苗はつられるように笑った。
「ただし晩ご飯ぐらい奢れ。デザート付きね。」
「あ、じゃあ2人でデートって事で。」
「・・・馬鹿。」
香苗はコートを着込み、顔を埋めるようにマフラーを巻いた。
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