第3章 雪解け
「それに俺の香苗さんが他の男に抱かれてるなんて許せません。」
「誰がお前の女だ、誰が。」
「今俺の目の前にいる、世界中の誰よりも大好きな香苗さん。」
「あらやだ、あたしったら愛されてる。」
香苗は茶化して笑い飛ばすと、自分の机に戻ってカバンを漁った。
「あいつらも甘えられる相手がいなくなって可哀想に。」
カバンの中から携帯が出て来た。
すすっと慣れた手つきで操作する。
そんな香苗を見ながら、啓太は見透かすような目つきで笑った。
「正直いい気味でしょ?」
啓太の言葉に香苗は驚いて目を見開く。
が、すぐ元の笑顔に戻った。
「あははっ、そうだね。」
香苗は携帯から電話帳を開いた。
「もたれ掛かり合うだけの怠惰な付き合いには、もう疲れちゃったよ。」
しばらくして、香苗の携帯からいくつかの連絡先が消えた。
空が白んでいた。