第2章 極寒
啓太はあの日の穏やかな談笑を思い出していた。
「好きって何ですかー?」
「あたしも分かんないから、今好きな人がいないんじゃない?」
「じゃない?って、聞かれても困りますよ。」
「そうだね。」
あの時も香苗は笑っていた。
香苗さんは本当に。
本当の本当に忘れてしまったんだ。
好きって気持ちも。
愛情も。
拒否も。
自分を大切にする事も。
人を傷付ける事も。
俺はサイテーだ。
寂しいからって、好きだからって。
自分を責め続けている香苗さんに。
相手の気持ちを考え過ぎる香苗さんに。
拒否する事を忘れた香苗さんに、止める事無く感情をぶち当てたんだ。
「愛してる」なんて言葉を盾に、ストーカーと同じ事をして・・・。