第2章 極寒
1年前、とある先輩に告白された。
当時大好きな恋人がいたあたしは当然告白を断った。
それでも先輩は引き下がらなかった。
電話やメールが毎日届いた。
あたしが取っている授業を全て調べ上げて、授業後の教室に足を運んで来た。
帰宅するあたしについてきて、自然と家も特定された。
一度バレると何度でもやってきた。
会うととんでもない力で振り回されて、抱きしめられたり、キスされたりした。
「ストーカーで警察に訴えよう。」
恋人にそう言われてもあたしは首を横に振った。
元々研究者として尊敬していた先輩だったのもあって、強く拒否を示す事が出来なかった。
あの人の輝かしいはずの未来を、あたしなんかの手で潰す事は出来なかった。
「香苗ちゃん。」
話しかけて来るストーカーをやんわり笑顔でかわしていた。
いつか終わるはずだ。いつか。
自分でどうにか出来るはずだと、次第に恋人にその話をすることも無くなっていった。