第1章 冬
香苗はうんざりしていた。
結論的に言うと、どうやらあたしの「原田はあたしになんて興味無い」という解釈は間違っていたらしい。
あの日の事は原田の中では「お互い了承してやった事」であって、あたしに対して悪い事をした自覚は無いんだと思っていた。
以前より彼女一筋になって、浮気した事を彼女に悪いと後悔してるんだと思っていた。
もうあたしの事は先輩としてしか見ていないんだと思っていた。
だから安心して、以前と変わらず先輩後輩として接してこられたってのに。
読みが甘かった。
まさかあの日の事を謝ってきて、しかもあたしを彼女に選ぶだなんて。
はぁーっ、大きなため息が出た。
「本当に何も気にしてないんだってば。」
椅子に大きくもたれ掛かって、香苗はか細い声でうめいた。
「あたしは原田を責められるはず無いんだよ。」