第1章 冬
「なんで俺を責めないんですか?」
「だから気にしてないってば。」
とてもそうとは思えなかった。
「香苗さん、辛かったはずですよ。」
「・・・原田が謝ってくれたから、もういいじゃん。」
「謝りましたけど!」
そういう事じゃないはずだ。
ごめんですんだら警察はいらない!じゃないけれど。
もっといっぱい話し合って。
ここは自分が悪い、あなたはここが悪いって議論して。
分かり合って、許し合って、それで解決するような事じゃないのか?
あの日も今日も、香苗さんは笑顔を崩さない。
「ごめん」の一言で「全てを水に流しましょう?」とでも言うかのように。
そんなの、あの日俺が言った「サイテーな事していいですか?」と変わらない。
「俺、香苗さんが何を考えてるのか分かりません。」
啓太が前のめりで詰め寄る。
「ちゃんと香苗さんの事知りたいです。」
香苗が後ろに仰け反る。
「香苗さん、無理して笑ってるんじゃないんですか?」
目をそらされた。