第1章 冬
「あたし何も気にしてないよ?」
どこかで予想していたはずの許し。
なのに何故か、怒られるより追いつめられる感覚がした。
「原田が謝るような事じゃないよ。」
にこにこ、目が無くなるほどの笑顔。
「あーでも、他の子にはあんなことしちゃダメだよ?」
香苗は「めっ!」と後押しして、まるで母親のように笑った。
啓太は理解が出来なかった。
他の子にはあんなことしちゃダメだよ、だって?
じゃあ香苗さんになら、何をしても許されると言うんですか?
まるで自分は傷付けられて当たり前とでも言うように、香苗さんは笑い続けるんですか?
本当はきっと怒ってるはずだ。
さっきだって、怒ってるような声してたじゃないですか。
心も体も踏みにじった俺の事なんて憎んで当たり前なのに。
何よりも、許された事でほっとしている自分が許せなかった。