第1章 冬
そうと分かれば、彼女と別れて香苗さんに告白しようと思った。
でも待て。香苗さんは俺をどう思っている?
考えたらとてつもなく怖くなった。
あの日が過ぎても変わらず先輩として仲良く付き合ってくれる香苗さん。
優しい香苗さんは、俺のわがままも笑顔で受け止めてくれたんだろう。
でもそれと傷付いていないのは違う。
傷付けたのは俺だ。
我慢させているのは俺だ。
自分を都合良く扱った人間となんて付き合えるはずがない。
心の中では、俺の事を殺したい程憎んでいるのかもしれない。
全てを壊したのは紛れも無く俺自身だった。
やっと自分の気持ちに気付いたのに、その時にはすでに取り返しのつかない事になっていた。