rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第15章 rain of fondnessⅤ-6
ナッシュが体内に溢れさせる欲望、それゆえに再び打ち震えていたものを、彼が性懲りもなく昇華しようとしたときだった。
潤んだ唇に親指が触れると、名無しは思わず開口し、骨ばったそれを啄ばみ甘く噛んでみせた。
やけに積極性の滲むその振舞にナッシュが微量ながら驚けば、続けてもう一度、名無しは彼を驚かせてみせる。
その遠因は、名無しが後頭部を枕から離し、自らナッシュに口付けたからだった。
組み敷かれ、肩から上へうまく分散させた力を入れられない・・・が、多少辛くても必死になり、起き上がった果てにとったその行為。
ナッシュの薄い唇を割ることが意外に簡単だったのを、名無しはこのとき改めて感じていた。
「・・っ・・・、ナッシュとの・・・が・・、好き。好きだから・・ずっとしてたい・・だから、ッ・・離さ・・・ないで――」
「、・・・ハッ・・」
「・・・ッ・・、ナッシュ・・・?」
「いや。――オレは・・―――・・・名無し・・」
「ッ――・・・あ・・・ぁ・・、ふ・・・ぁ、ん!」
自分から熱い舌を捩じ込んで、沢山それに絡みついて、燻る想いを正面からぶつける・・。
このとき望んだものは、なんてことのない些細なそれではあった。
けれど、意表を突いてなお、ナッシュの気持ちを引き付けるには十分すぎるほど、名無しの口にした言葉は大きな意味があるものだった。