rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第3章 rain of fondness3
「!・・・うるさ・・、・・・」
やがて観客にタイムアップも結果も知れ渡ると、今度は、ゲーム後独特の歓声が周囲に大きく響いていた。
いよいよナッシュのチームが本当にコートを跡にしようとした、そんな折に事は起きる。
「・・・・っ」
男も女も入り混じったギャラリーの中は名無しの傍、そこで、一人の女性が突然大きく声を荒らげる。
もっとも荒らげたとはいえ、ただ人名を叫んだだけ・・・相手に自分を気付かせようとしただけのそれではあったのだが。
名無しは突然の声量を間近にびくりとすると、その女性の方を一度見た。
悪目立ちもしかねない以上、プレイヤーに呼びかける行為など、顔見知りや友人でもない限りするものではないだろう・・・浅はかだなと安直に思う。
呼び止めたのは派手めの女性が口にしていたそれは、名無しも聞き覚えのある名だった。
直後、名無しがよかったと思ったのは、それがナッシュの名前ではなかったということ・・・。
ホッとする時点で妬いている何よりの証拠だということにも、勿論自覚は、最早するしかなかった。
「・・・・ナッシュ・・」
驚愕まじり、名無しはそっと、直後にナッシュの名を呟く。
当然小さな声量、人の多いその場では誰に聞かれる恐れもなかったからこそだ。
近くに居た女性が声高に口にしていたのは、同じチームでも、シルバーの名前だけだった。
シルバーも気付いて早々に女性めがけ駆け寄ってきたあたり、そういう関係なのだろうという邪推は容易かった。