rain of fondness【黒バス/ナッシュ】
第3章 rain of fondness3
「・・・・・」
タイムアップの瞬間は、このゲームがただの野試合なのか、それともそれなりの規模のものだったのか、名無しには分からなかった。
そのとき名無しにできたのは、ただひたすら、ナッシュが大きく息を吐きながらコートを跡にして、姿が見えなくなるまで彼の背を追い続けることだった。
自分が普段見ているナッシュとは大きく違いすぎて、一瞬でも、視線を逸らすのが勿体ないと感じたのだ。
チームメイトのことを散々に言っているのを、いつもはベッドの中で聞いている。
それでも、虚無的でも小さく笑みながら当然の勝ちに対し喜びを含ませ、加えてハイタッチをし合う様を見ていると、たとえ凶悪と噂されどもいいチームなのだろうなということは分かる。
どんなに卑劣で、ラフプレーが所々仲間にあろうとも、ナッシュが勝利に快感を覚えているのは概ね事実だろう。
そう思わせるような良い表情を、彼はタイムアップと同時に滲ませていた。
たとえ一見、日頃から狂気を匂わせる顔色を醸し出そうとも、名無しにはその違いが判別できていた。
「ナッシュ・・・」
なんとなく直感に頼って訪れた。
結果、実際そこにナッシュは居た。
本来ならわざわざこのギャラリーに混ざらずとも、さっさと電話一本すれば済む話だった。
なんてまわりくどいことをするものだと、名無しは立て続け、自分に冷笑を撒く。
連絡ひとつ・・・それが出来なくて、ただ淡く胸の奥をキュンとさせる。
まるで、胸が灼けるような想いだった。